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ふんわりした後輩とお堅い同級生
ふんわりした後輩とお堅い同級生
作者: みみっく

1話 栗色の髪とアルバイト

作者: みみっく
last update 最終更新日: 2025-12-14 13:58:56

 大学2年でバイトで小遣い稼ぎをして暮らしていた。バイトのシフトに入ったある日のこと、新人として入ってきたのは、ふわりとした栗色の髪が肩にかかる可愛らしい女の子だった。ハーフアップにした髪は、彼女の柔らかな雰囲気をいっそう引き立てている。接客業のピークタイムは、お互いに客の対応に追われ、まともに話す暇もなかった。しかし、客足が落ち着いた休憩時間、彼女と話す機会が訪れる。

 彼女は見た目通りの優しい声で、俺と同じ大学の一年生だと自己紹介をした。

「わたしミナです。〇〇大学の一年なんですよ」

「え? 俺と同じ大学だ。俺は二年のユウヤ。よろしくな」

 ミナは、大きな瞳をぱちくりと瞬かせてから、ふにゃりと愛らしい笑顔を浮かべた。その表情は、まるで咲きかけの花のようで、俺は思わず胸の奥が温かくなるのを感じた。

「ユウヤ先輩、同じ大学だったんですね! なんだか心強いです。よろしくお願いします!」

 ぺこりと深々と頭を下げ、白い肌にほんのりと赤みが差した彼女の姿は、ひどく初々しく、まるで小動物のようだ。そのあどけない仕草に、俺は知らず知らずのうちに、彼女を守ってあげたいという気持ちが芽生えるのを感じた。

 この日から、俺たちは暇な時間を見つけては、大学のことや趣味の話をするようになった。ミナが少しでも困っていると、俺はすぐに駆け寄り、声をかけた。そうして、次第に俺たちの距離は縮まっていった。

 ミナと話すようになってから、何度か遊びに誘おうと試みた。しかし、いざ言葉にしようとすると、胸の奥がざわついて、声が出ない。俺はただ、ミナの隣にいるだけで満足している自分に甘えていた。

 そんなある日の休憩中、ふと彼女がスマホの画面を見つめながら、ぽつりと呟いた。

「あー、明日の講義が休校になっちゃいましたよ。明日ヒマになっちゃいました……なにしようかなぁ……」

 その瞬間、俺の心臓は激しく高鳴った。休憩は交代制で、今は二人きりだ。こんなチャンスは二度とないかもしれない。心臓がドクドクと鼓動を打つのを感じながら、口から言葉を絞り出した。

「俺も明日は暇なんだけど、一緒に遊びに行かない?」

 俺の声は、少し震えていたかもしれない。ミナに断られてしまうかもしれない、という不安が胸を締めつける。しかし、それ以上に、ミナと二人きりで過ごしたいという強い思いが、俺を突き動かしていた。明日の予定は把握していないが、たとえ明日の予定をすべて投げ打ってでも、このチャンスを逃すわけにはいかない。俺は、彼女の大きな瞳を真っ直ぐ見つめて、ただひたすらに返事を待った。

 俺の誘いに、ミナは警戒心も嫌がる素振りも見せず、花が咲くようにぱっと明るい笑顔を見せた。

「わぁ……先輩もですか!? わぁーい。どこいきます? お買い物が良いなぁー」

 無邪気に喜ぶ姿に、俺は心の底から安堵する。この世のすべての苦悩から解き放たれたような、そんな気分だった。

「あ、連絡先を交換しない? 明日の待ち合わせとか決めよ」

 そう言ってスマホを取り出すと、ミナは頬を赤く染め、えへへ、と可愛らしく笑う。

「えへへ、ですねー」

 ミナの柔らかな指がスマホの画面をタップする。俺のスマホに、彼女の連絡先が登録されていく。その瞬間、俺の胸は温かい光で満たされた。

 明日、ミナと二人きりで会える。その事実が、俺の心を希望で満たしていく。俺は、彼女とのやり取りを何度も見返し、幸せな気持ちに浸っていた。

 そして翌日に待ち合わせ場所に現れたミナは、いつものバイトの制服姿とは違い、ふわりとした白いワンピースを身につけていた。髪は丁寧に巻かれ、陽の光を浴びて淡く輝いている。頬にはほんのりチークがのせられていて、その姿はまるで天使のようで、俺は思わず息をのんだ。

 ミナは俺の顔を見るなり、嬉しそうに微笑んだ。

「ユウヤ先輩、お待たせしました! 今日はよろしくお願いします!」

「ううん、俺も今来たところ。ミナ、すっごく可愛いな」

 素直にそう告げると、ミナは照れたように俯き、白い頬を赤く染めた。その仕草が可愛くて、俺は胸の奥がキュンとなるのを感じた。

 目的地のショッピングモールに着き、俺たちはまず、ミナが行きたがっていた雑貨屋に向かった。店内には、可愛らしい小物やインテリアが所狭しと並んでいる。ミナは、目を輝かせながらひとつひとつ手に取り、楽しそうに俺に話しかけた。

「見てください、先輩! このキーホルダー、猫の形してるんですよ! すっごく可愛いー!」

 そう言って、ミナは俺に猫のキーホルダーを見せてくれた。その無邪気な笑顔を見ているだけで、俺の心は温かくなる。

 その後も、俺たちは服屋や本屋、カフェなどを巡った。ミナは、試着室から出てくるたびに、俺に「どうですか?」と尋ねてくる。少し大きめのパーカーや、ひらひらとしたスカートを身につけた彼女は、どれも可愛らしくて、俺は「似合ってるよ」と正直に伝えた。そのたびに、ミナは嬉しそうに「えへへ」と照れ笑いを浮かべる。

 お昼は、フードコートで好きなものを買って食べた。ミナは、カツサンドを頬張りながら「美味しいですね!」と満面の笑みを浮かべる。口の端についたソースを、俺がそっと指で拭ってやると、ミナは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕方になった。夕焼け空の下、駅へ向かう道で、ミナが寂しそうに俺を見つめる。

「今日は、すっごく楽しかったです。ありがとうございました」

 そう言って、ミナは俺の袖をきゅっと掴んだ。その小さな手が、俺の胸にじんわりと温かさを広げた。

「俺も楽しかったよ。また、二人で遊びに行こうな」

 俺がそう言うと、ミナは嬉しそうに頷き、夜空に輝く一番星のように、満面の笑みを浮かべた。

 ミナと何度かデートを重ねるうちに、俺の心はますます彼女でいっぱいになっていった。他愛のない話をするだけで楽しく、ミナが笑うだけで俺の心は満たされる。この気持ちを、もうこれ以上隠しておくことはできない。そう強く思ったのは、今日のデートの帰り道だった。

 カフェでランチをしたり、ウィンドウショッピングを楽しんだり、楽しい時間はあっという間に過ぎた。帰り道、夕暮れの空が茜色に染まり、街灯がぽつりぽつりと灯り始める。

「今日は、本当に楽しかったです。ユウヤ先輩、いつもありがとうございます」

 ミナはそう言って、俺の顔を見上げた。その瞳は、夕焼けの色を映してキラキラと輝いている。俺は、その愛らしい姿に、もう我慢ができなくなった。

「ミナ」

 俺は、立ち止まり、ミナの腕をそっと掴んだ。ミナは、不思議そうに首を傾げた。

「どうしました?」

 ドキドキと心臓がうるさいくらいに鳴り響く。緊張で、喉がカラカラに乾いていた。でも、今、この気持ちを伝えるんだ。勇気を振り絞り、俺は言葉を紡いだ。

「ミナと会うようになってから、毎日がすごく楽しい。ミナの笑顔を見るだけで、俺は元気になれるんだ。俺、ミナのことが……好きだ。ミナ、良かったら……俺と付き合ってくれないか?」

 俺の言葉に、ミナは何も言わずにじっと俺を見つめている。大きな瞳は少し潤んでいて、俺は不安になった。もし、このまま振られてしまったら……。そんな考えが頭をよぎり、俺はギュッと拳を握りしめた。

 すると、ミナはふわりと微笑み、か細い声で答えた。

「はい……。わたし、先輩のこと、ずっと好きでした」

 その言葉を聞いた瞬間、俺の全身から力が抜け、胸に温かいものが込み上げてきた。ミナは、照れたように顔を伏せ、両手でスカートの裾をぎゅっと握りしめている。その仕草が、あまりにも可愛らしくて、俺はたまらない気持ちになった。

「本当に? よかった……!」

 安堵と嬉しさで、俺はミナを優しく抱きしめた。ミナの柔らかい体が俺の胸にすっぽりと収まり、甘い香りが俺を包み込む。ミナは、俺の背中にそっと腕を回し、顔をうずめた。

「これからも、よろしくお願いしますね、ユウヤ先輩……」

 そう呟くミナの声は、甘くて震えていた。俺は、ミナの髪をそっと撫で、その愛おしい存在を確かめるように、さらに強く抱きしめた。

 こうして、俺たちは恋人になった。

 俺とミナは、恋人同士になってから、バイトのシフトが一緒に入るたびに、休憩時間を楽しみにするようになっていた。

 そんなある日、大学のサークルの飲み会があることをミナに告げた。すると、ミナは少し寂しそうな表情を浮かべた。

「ユウヤ先輩、飲み会、楽しそうですけど……」

 そう言って、俺の袖をきゅっと掴んだ。

「ミナも、行きたいのか?」

 俺がそう尋ねると、ミナは俺の腕に頬をすり寄せ、小さな声で甘えるように言った。

「ミナ、先輩から離れたくないんですけど……。ずっと、一緒にいたいです。ダメですかぁ……?」

 上目遣いで俺を見つめる大きな瞳は、子犬のように潤んでいる。白い頬はほんのり赤く染まっていて、その仕草があまりにも可愛くて、俺は胸の奥が締め付けられるような気持ちになった。普段、しっかりしているミナの、こんな甘えた姿は初めて見る。

 俺は、ミナを飲み会に連れて行くことに抵抗があった。サークルの飲み会は少し騒がしいし、ミナが気を遣ってしまうかもしれない。でも、この可愛らしい仕草をされては、もう何も言えなかった。俺は、ミナの頭を優しく撫でて、笑顔で答えた。

「わかった。じゃあ、一緒に行こうか」

 俺の言葉に、ミナは嬉しそうにパッと顔を輝かせた。その笑顔は、まるで夜空に咲く花火のように、俺の心を明るく照らした。

 ミナは俺の腕にさらにぎゅっとしがみつき、幸せそうに微笑んだ。

 飲み会の会場は、賑やかな居酒屋だった。普段はクールな先輩や、明るい後輩たちが集まり、テーブルを囲んで酒を酌み交わしている。そんな中で、ミナは少し緊張した面持ちで、俺の隣にちょこんと座っていた。俺は、そんなミナの緊張を和らげるように、時折話しかけたり、グラスに烏龍茶を注いでやったりした。

 最初は遠慮がちだったミナも、時間が経つにつれて徐々に場に慣れてきたようだ。先輩たちが話す面白い武勇伝に、くすくすっと笑い声を漏らす。その仕草がいちいち可愛らしくて、俺は自然と頬が緩むのを感じた。

 ミナは時折、俺の太ももに手を置いて、小さく揺さぶる。

「先輩、あの話、面白かったですね」

 そう言って、瞳をキラキラと輝かせる。その無邪気な様子に、俺は思わずミナの頭を撫でてやった。ミナは気持ちよさそうに目を細め、さらに俺に身を寄せてくる。

 そんな俺たちの様子を、テーブルの向かい側に座っていたサークルの先輩が、羨ましそうな眼差しで見ていた。先輩は、俺に聞こえるか聞こえないかくらいの声で、ぼそりと呟いた。

「おい、ユウヤ。お前、彼女とラブラブじゃんか……」

 その言葉に、俺は少し照れながらも、満更でもない気分になった。ミナは俺の腕に頬をすり寄せ、幸せそうに微笑んでいる。俺は、そんなミナの甘える姿が愛おしくてたまらなかった。

 夜も更け、終電の時間が迫る中、飲み会は最高潮に達していた。楽しい時間はあっという間に過ぎ、ふと気づけば、終電はとっくに終わっていた。

「あー、やっちまったー! 終電逃した!」

 誰かがそう叫ぶと、同じく終電を逃した何人かが、ため息混じりにそれに続いた。

 すると、近くに住んでいるというサークルの先輩が、明るい声で提案した。

「じゃあ、俺ん家来るか? 狭いけど、どうせみんな雑魚寝だし」

 その提案に、終電を逃した男女が入り混じり、ぞろぞろと先輩の家に向かうことになった。もちろん、俺とミナもその中に含まれていた。

 街灯がぼんやりと道を照らす中、ミナは俺の服の裾をぎゅっと握りしめていた。

「ユウヤ先輩、お泊り、初めてですね……」

 そう呟くミナの声は、少し上擦っていた。俺は、そんなミナの緊張が伝わってきて、胸の奥が温かくなるのを感じた。

「大丈夫だよ。みんな一緒だから、安心して」

 俺がそう言って頭を撫でてやると、ミナは安心したように微笑んだ。先輩の家に着くと、すでに何人かが部屋に上がっていた。部屋は、男ばかりの家らしく、雑然としていたが、それでも居心地の悪さはなかった。

 各自、持ってきた上着を脱ぎ、床に散らばる座布団やクッションを寄せ集めて、自分たちの居場所を確保していく。

 俺とミナは、壁際に二人分のスペースを見つけ、並んで座った。ミナは、少し恥ずかしそうに俺に視線を送ってくる。俺もまた、ミナと同じように、この状況にドキドキしていた。

 部屋には、談笑する声と、時折響く先輩たちのいびきが混ざり合って、不思議な静けさが漂っていた。

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